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良きユーザーがいないという問題[週記]

photo credit: Blinky Tom via photopin (license)

IT関連の業界では景気が少し上向くと決まって、技術者が不足しているということが問題になります。そして、職業訓練でエンジニアを増やすであるとか、育成できる学校を増設するなどといったことが話題にあがります。

ところが、私が実態として感じるのはそれらのエンジニア不足の問題は一時的に足りない要因補充の要素が強く、ある種使い捨ての印象です。

そもそも論として、私はIT技術者が足りない、だから技術者育成の教育をして、数を早く効率的に増やそうという議論は短絡的なのかなと。

日本の場合、ITに関する仕事を発注する側にITを軽く見ている傾向が強く、安易に技術者を大量を育成すれば、安く買いたたかれて疲弊してしまうケースが多いと感じています。ITの世界は技術トレンドの変化も早く、結果としてせっかく育成した技術者も使い捨てのようになってしまうケースも多いです。

こういう問題は発注する側にシステムに対する一定の理解があり、労働に対して適正な対価を払う意識があれば防げる部分が大きいのではと感じています。適正な働けるエンジニアが増えれば、現場で人を育成する余裕も生まれ、最終的にエンジニアの絶対数も増えるはずなのです。

なので、エンジニアが足りないから、即エンジニア育成ではなく、もっと長期的な視点でユーザーのレベルを上げていき、最終的にエンジニアを育成する流れのほうが適正だと感じるのです。

実のところ、この問題はIT業界だけではないのでしょうか。あらゆる業界において、マーケットを成長させるのはユーザーです。ハイレベルなユーザーがいるからこそ、ハイレベルなサプライヤー(供給者)が生まれるはずなのです。だからユーザーのレベルが低ければ、業界自体もそれ相応の成長しかしません。

国会で重要な審議が採決されているのに、テレビで芸能人のスキャンダルばかり報道されることに嫌悪感を示す人もいますが、そこにニーズがあるから放送しているとも言えます。

年に何度かニュースで取り上げられる高速バスの事故もそうです。あのような悲しい事件は、安ければ安いほどいいというユーザー側の意識が引き起こした部分があります。ユーザー側にも自衛のすべとして、この価格の安さをおかしい、何かあるのではと感じるセンスをこれからの世の中は身につける必要があるではと感じています。

見過ごされがちですが、ハイレベルなユーザーとは、一つのポジショニングであり、職業としてもっと注目を浴びるべきだと考えています。よく仕事論などを語る際に評論家はいらないなどという話を耳にしますが、とんでもない。本当に見識のある評論ができる人は今の時代にこそ必要だと、私は感じています。

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