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支援しあうが関係性が新しい経済を作る〜【読書レビュー】ゆっくり、いそげ

経済的な豊かさだけを求めても、人は幸せになれない

日本は労働生産性(GDP)が先進国の中で低い。たからより生産を効率化して国際競争に勝ちうる力を持たなければならない。とは以前から言われていることです。それは確かに大事なことですが、それのみを追求すれば、世の中に歪なゆがみを生み出してしまうのではと感じています。

ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~

経済的な発展のみを追求した社会は、システムに人が組み込まれた生きづらい社会になってしまうのではと考えています。経済的な発展は前提として大事だけれど、それを越える価値観をないのか。そう感じて悶々としているときに、本書に出会いました。

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経済は目的なのか手段なのか

現代社会の労働生産性は基本的により大規模に、よりシステマティックに仕事することで向上させることができます。

例えば、飲食店であれば、大規模な資本を投下して、より大量に品質管理と生産を行い、駅前などの人が多く通るところに、店舗を出店すれば、頑固親父が経営するこだわりのお店よりも売り上げや利益は上がるのかもしれません。

ただし、システムとして経済が動くとき、個人の意志は二の次になってしまう。そうすると人はシステムを活かすための存在になってしまいます。

ニュースなどを見ていると、よく企業の合併や買収の話が出てきています。合併や買収は経済的合理性からみればいいかもしれないけれど、中で働いている従業員は右往左往しているはずです。

本来、個人の世の中を便利にしたり、個人の自己実現するために存在するはず企業が、いつのまにか企業といシステムを活かすための手段として社員を使っている。私はにはそんな印象を私は受けます。

経済的は成長はものすごく大事だけれども、それだけでは我々は疲弊してしまうのは間違いないでしょう。

西国分寺のクルミドコーヒー

本書の著者、影山さんは元ベンチャーキャピタルのファンドマネージャー。多くのスタートアップの企業に投資を行い、経営をサポートしてきた実績持たれています。その後、2008年から東京の西国分寺で「クルミドコーヒー」というカフェを経営されています。

立地が必ずしもいいとは言えない場所にありながら「クルミドコーヒー」は食べログのカフェ部門で全国1位を獲得。

クルミドコーヒーの運営は、ファンドマネージャー時代に経済的な合理性を優先するスタイルの限界に感じた経験から、経済的合理性だけでは得ることのできない喜びを得るための様々な取り組みがなされています。

よく自己啓発系のビジネス書などに「GIVE AND GIVEの精神を大事にしよう」と書かれています。

ですが、人が大きなシステムに飲み込まれたとき、システムが個人を利用する関係性が生まれ、また個人をシステムを利用しようとするようになります。会社組織は従業員を駒として扱うようになり、従業員は会社を生活の糧として利用するようになる。

影山さんは、この経済効率優先の中で生まれる個人と組織の関係性に疑問を持ち、クルミドコーヒーの中で様々な取り組みをしていきます。目指したのは人が支援しあう関係性のある組織つくりでした。

仕事に人をつけるか、人に仕事をつけるか

一般的な経営論として、仕事を属人化させてはいけないということが言われます。仕事の内容はできるだけマニュアル化して、だれでもできるようにする。要するに仕事をシステム化するということです。

かっての日本マクドナルドや最近で言えば、無印良品などはこれの成功事例と言えるでしょう。

ですが、クルミドコーヒーではこれと真逆、すなわち人に仕事をつけるように徹底しています。仕事に人をつけた場合、どうしても人は換えの効く駒になってしまい、仕事に対するやりがいを失ってしまうことになるからです。

人に仕事をつけ、その人だからできることを仕事にしていけば、当然任された人はやりがいを見いだします。また、人として尊重されているという感覚が強くなるので、当然周囲に人に対しても支援するという気持ちが強くなると影山さんは考えています。

結果、利用し合う関係ではなく、支援しあうGIVE AND GIVEの関係性が生まれるのです。

もちろん、経営的な観点で見れば、品質が安定しない、担当している人が辞めてしまえば、ノウハウが残らないなどのマイナスの要因があります。影山さんはそれでも、理想のカフェの実現にむけて、あえて人に仕事をつける経営をされているのです。

システムこだわり過ぎるとイノベーションは生まれない

今、日本が抱えている経済的な課題をみると、 そのほとんどは社会がシステムに比重を置きすぎていることに起因してると私は考えています。

iPhoneのように世の中にイノベーションを起こすような製品がなかなか生まれなかったり、過労の末に自殺者が出てしまうようなブラック企業の問題、コスト重視で法令を守らず死亡事故を起こしてしまうバス会社などは、いずれも個人がシステムに利用されることが原因です。

なんとなく世の中に感じる閉塞感。マスコミなどでは経済成長が低いことがその原因のように言われますが、私は必ずしもそうではないと感じています。どちらかと言えば、過剰にシステムよりになってしまった今の労働のあり方を変えて、個人がより主体となった働き方を考えるべきでしょう。

おそらくは、政治の側もその問題をある程度認識しているから、一億総活躍社会のようなキーワードが生まれるのではと感じています。ただ、その実現には、まだまだ道のりが長いと言えそうです。

ただ、クルミドコーヒーの取り組みには、今後の社会や経済のあり方を考える上で試鑽につまった部分が多くあるのは間違いないと言えます。

今日のアクション

実のところ、この本の感想を記事に纏めるのにはかなり苦労しました。自分にとって重要だと感じるキーワードがあちらこちらにあり、どれに焦点をあてて記事を書くかがかなり難しかったのです。

これからの個人の働き方を考える上でももの凄く参考になる本なので、とにかくおすすめの一冊です。

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