少子高齢化やグローバル化、ITの普及など数十年前には想像もつかない世の中になっています。急速に世の中が変化する中では、時代の発展とともに発展する産業もあれば、衰退する産業があるのは避けられません。
書店や銭湯などは一部のフランチャイズ化や大規模化に成功したところ以外はどんどん無くなっています。ただ、そのような状況下でも独自性を打ち出しビジネスを発展させている小さなお店もあります。
これらのお店に見える共通項は、自分のビジネスの価値を再定義しコミュニティ化に成功している点です。浅草にある老舗銭湯の仕事術を参考にします。
スポンサーリンク老舗銭湯4代目の挑戦
田村祐一さんは浅草の老舗銭湯「日の出湯」の4代目です。年齢も30代でこのジャンルのビジネスに関わるにしてはおそらくかなり若いほうです。
廃業寸前だった日の出湯の跡取りとして、経営に携わってから半年で来店者数が5割増、売り上げが2倍になったそうです。
銭湯の世界や値段が東京都の条例で決まっているため、価格競争はできません。日の出湯は2000年に立て替えを行っているため、さらなる設備投資も難しい状況。
そのような中で田村さんが意識したことは、お客さんに日の出湯のファンになってもらうことでした。
気持ちのいい挨拶に一言添える
銭湯に限らず、飲食店などほとんどのお店では、入ったと同時に「いらっしゃいませ」と言われます。もちろんそれは大事なことなのですが、現代の日本ではあまりにもどこにいっても「いらっしゃいませ」なので逆にげんなりすることもあります。
田村さんは相手の反応を見ながら、「いらっしゃいませ。こんにちわ」と一言付け加えるようにされています。こうすることでお客さんとの会話が増えていったそうです。
田村さんは銭湯のビジネスの価値を「お風呂につかること」だけに求めていません。お客さんが気軽に立ち寄れる快適であたたかみのある場所であることを意識しています。
老舗の銭湯にくるお客さんはご年配の方が多く、その中には1人暮らしの方もおられます。そのような状況下で人の暖かみを感じることができる部分に銭湯の価値を生み出しています。まさに、サービスではなく体験を売っているととらえているのです。
あの人も素敵な名前を持っている
余程の常連でない限り銭湯で名前など呼ばれることはありません。ですが、田村さんは、できるだけお客さんの名前を覚えるようにされています。
人間の心には承認欲求が存在します。相手に名前を呼ばれているだけで自分が認知されていることを自覚でき親しみが沸いて来るのです。名前を覚え、個人と個人の関係を構築することで「日の出湯」のファンを増やしているのです。
書店の分野では、下北沢の本屋B&Bのように本好きのコミュニティとしての役割を担うことで成功している事例もあります。
人口減少や地域コミュニティの消滅が問題視されて久しいですが、今後地域のコミュニティとしての役割を銭湯が担うということがあり得るのかもしれません。
0円の体験にこそ価値がある
スモールビジネスの世界で規模での勝負はできません。このような規模の論理で勝負するのが難しい分野でうまくいっているビジネスは、ほとんどの場合個人にファンをつけています。
ここ最近話題になっているWeb制作の株式会社LIGさんなどが有名な事例です。現代はサービスが過剰供給の時代のため、よりいっそう誰から買うかが重要になって来ています。
日の出湯に近くには、設備の充実した大規模なスーパー銭湯があり、規模や単純なサービスのバリュエーションでは勝ち目はありません。
ですが、日の出湯には田村さんに会いたいという理由で銭湯に来るお客さんが多くいるそうです。日の出湯はセルフブランディングの成功事例と呼べると考えています。
今日のアクション
実は私も一度日の出湯にお風呂に入りにいったことがあります。決して大規模なスーパー銭湯ではないのですが、決して昔ながらの銭湯というわけではなく、どこかモダンな雰囲気を感じさせる気持ちいい銭湯でした。
実は、田村さんは銭湯に関するWebメディアも運営されています。銭湯とWebメディアという取り組みは他で聞いたことがないので興味深いです。
銭湯のWebメディア
電子書籍「本好きのためのAmazonKindle読書術」著者。Kindle本総合1位を2度獲得。その他WordPressプラグイン「Sandwiche Adsense」を開発。トライ&エラー可能な人生を目指して活動中。世の中の問題はだいたいコミュニケーションに関わるものなので、もっと気楽にやろうをモットーにブログ「モンハコ」を運営。
詳しいプロフィールはこちら。
Comments
comments